2009年度版
今年は昆布漁が見たくて8月26日から4泊5日の長めの日程を組みました。一週間前まではすべて晴れの予報でしたが、出発日が近づくにつれて予報が雨マークに変わり一抹の不安がよぎりました。今年の昆布生産予想は良でしたが、昆布漁の時期になって天候が思わしくなく特に日高、釧路地区は減産見込みに変わりました。弊社が使用する道南天然真昆布は幸いにも回復予想で推移しています。とにかく今年の状況を確認すべく函館へ飛びました。やはり函館空港に着くと、空はどんよりと曇っており翌日は雨、28日に至っては土砂降りの雨で昆布漁は結局見れずじまいでした。今年の探訪記は本場折浜、黒口浜、白口浜の道南3銘柄の漁師さん訪問記と観光地を紹介していきたいと思います。
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本場折浜(ほんばおりはま) 小安(おやす)
海から採ってきた昆布を乾燥してビニールシートで覆い保管している様子。結束したり、伸したりする作業は手間と時間がかかるので一度乾燥した昆布を柔らかくしてから順次加工するのだそうです。天候が良ければ昆布漁が続きますので、加工の方は後回しになります。
本場折浜小安の漁師さん宅の作業場での風景。昆布の先をステンレス棒に付いているクリップに挟み回転させながらシワを伸ばしている様子。巻き取った昆布は心棒から抜き横のコンテナに並べている。昆布を一枚一枚手作業で巻き取る作業は大変根気のいる作業です。
左の画像は巻いてシワを伸ばした昆布を定規を当てて幾重にも折り曲げている様子。本場折浜独特の加工方法です。右の画像は綺麗に折りたたんだ昆布に伸しをかけているところ。板を何枚も入れてよく伸びるように工夫しています。
小安の組合の倉庫の様子。まだ昆布漁の最盛期なので手間のかからない雑昆布が積まれていました。10月にもなると製品で一杯になるのでしょう。
小安の組合の幹部の方々との懇親会の風景。今年の昆布の出来具合や来年の予想などたくさんの情報交換をさせていただきました。毎年訪問させて頂いているにもかかわらず、いつも温かく迎えていただき本当にありがたいことです。
黒口浜(くろくちはま) 日浦(ひうら)古武井(こぶい)恵山(えさん)椴法華(とどほっけ
日浦(ひうら)にて
日浦港の様子と岬の岩盤。風雨が激しいせいか風化が進んで岩石がたくさん散らばっていました。
左は狭い岩盤の隙間にびっしり生えているみついし昆布。右は土砂降りの海岸線。
車で走っていると昆布漁の船を発見。車を降りて見に行くと拾い昆布であろう2隻の船がウインチで引き上げられているところであった。おじさんがずぶ濡れになりながら何やら大きな声を出していた。方言がきつく内容は判らないが、とてもエキサイトしていた。この後、奥さんであろう女の人に昆布竿を振り上げだだならぬ雰囲気だったので声もかけれずその場を後にしました。
古武井(こぶい)にて
黒口浜古武井に入る。天気は回復傾向だが人の姿が見えない。集落をながめていると電気のついた建物がありノックしてみると、中で昆布の結束作業をしていた。中は乾燥機が回りカラッとしていて真っ黒な促成昆布が並んでいた。味は天然昆布には劣るが黒光りした綺麗な昆布である。右は促成昆布に圧力をかけてダンボールで梱包する機械。
左の画像は私も初めて見る伸して乾燥する網で、右の前浜から採った昆布を並べて挟んだまま機械乾燥するのだそうです。一枚ずつにスプリングが付いており使い勝手が良さそうです。写真の昆布は天然真昆布で褐色のいい色をしていました。
天日乾燥中の画像3点。左から、海から上がって間もない三石昆布と真昆布。画像の真ん中より左側が三石昆布(属名日高昆布で弊社では使っておりません)で昆布の端が波打っています。右半分の幅の広い昆布は天然真昆布です。真ん中の画像は表面が凸凹のがごめ昆布です。右端の画像はほぼ乾燥が入った状態のもので、手前の細いのがみついし昆布でここまで丸まって細くなります。上の幅の広いのは真昆布ですが、3点の画像の昆布は丈が短くすべて拾い昆布です。この日は天気が良くて海も穏やかでしたが、一段上の前浜の画像を見ても海が濁っており天然真昆布の採取はとても無理だと思いました。
恵山(えさん)にて
活火山恵山の南側に位置し、道路に並行して漁師さんの家が並んでいる。真っ黒に日焼けした漁師さんに声をかけお話を聞きました。天日乾燥しているのは三石昆布で好天が続かない中、拾い昆布漁を行っているとのこと。天産物は天候に左右されるので大変だと嘆いておられました。
恵山は道路が行き止まりになる所にあり、普通の人はおそらく行くことはないと思います。北側には恵山がそびえ道路に沿って民家が点在するスペースしかない小さな集落です。そこで漁師さんたちは過酷な自然を相手に漁業を営んでおられる姿には正直頭が下がります。左の画像は行き止まり手前の小さな港で船は3艘しか見当たりませんでした。手前には長さの違う昆布採取棒が7本ならべてあり、昆布が生えている水深の幅が想像できます。おそらく短い採取棒は浅瀬に生育する三石昆布用だと思います。右の画像は港内に繁茂している三石昆布で、特徴である真ん中に走る白い筋がお分かりいただけるかと思います。真昆布にはこのような筋はありません。恵山では今回の訪問中一番天気がよく海の水が透き通ってとても綺麗でした。
恵山は今回で2度目ですが天候が良かったので、散策路を歩いて噴煙が上がるすぐ近くまで行ってきました。硫黄の匂いと蒸気音を間近で感じることが出来て爽快な心地でした。右は地元のおばさんに聞いたのですが、北海道で2箇所にしか生育していない植物(名前は忘れました)で黒い実は食べられるそうです。ちぎって食べてみるとブルーベリーのような実で甘酸っぱい味がしました。
椴法華(とどほっけ)にて
夕方5時ごろ椴法華の組合に行くと、鍵が開いて電気が点いているのに人の気配が感じられず何度呼んでも返事がない。あきらめて宿に帰ろうとした時、向こうからおじさんが歩いてきたので尋ねてみると組合に昆布を入れる箱を取りに来たといい、事情を話して昆布の作業場を見せてくださいとお願いすると、「どうぞ」と快く連れて行ってくれました。
椴法華の昆布は黒口浜では肉厚で通っており弊社でも使用しています。左上が作業場の建物で前には天日乾燥するために石がびっしり敷かれています。屋内で今年の昆布の品質を聞き現物を見せていただきました。黒口浜らしく黒く肉厚で幅のある立派な昆布で出来のよさが感じられました。ずーと見てくると黒口浜は昨年より天然真昆布は多そうです。
宿泊したホテル恵風からすぐ近くの椴法華水無海浜温泉へ朝5時に起きて行きました。ちょうど日の出の頃でうす曇りではありましたが綺麗な写真が取れました。そのあと服を脱いでゆっくり温泉につかりました。
白口浜(しろくちはま)  尾札部(おさつべ)臼尻(うすじり)大船(おおふね
尾札部(おさつべ)にて
南茅部尾札部支所にて副組合長さんと懇談し今年の生産状況と品質をお聞きしました。内容はここ3年来の不作に比べると生産量は回復し品質もまずまずで来年も期待できるそうです。右は組合の倉庫の昆布で結構な量の昆布がありました。尾札部は質・量とも白口浜最大を誇る浜なので、明るい話を聞けてホッとしました。
元揃昆布が出来るまでの大まかな工程の画像4点。左は乾燥した棒昆布を柔らかくして機械で伸ばしながら巻き取っている様子。2枚目が巻き取った昆布。次に巻き取った昆布を一枚ずつはがして丈をそろえて折りたたんでいるのが3枚目の画像。一番右が折りたたみが完了した昆布ですが製品は天然ではなく養殖昆布だそうです。見る限り天然と養殖の違いは分かりません。この後さらに伸しをかけて乾燥し、最後に黄色い耳をカットして出来上がりとなります。本場折浜と比べると機械化が進んでおり効率が良いような気がします。ここの漁師さん宅では養殖昆布が終わってから天然昆布に変わるそうです。
何とか天然昆布が見たくて車で走りながら探していると、1軒だけ昆布を干しているのを見つけました。車を降りてたずねてみると中から若い方が現れ声をかけると気さくに話をしてくれました。干している昆布は養殖昆布だと聞かされ、「天然昆布は?」と聞くと「見るかえ」と言ってすぐ近くの作業場に連れて行ってくれました。中は弊社倉庫と同じ天然昆布のいい匂いが充満していました。
上右の画像は尾札部天然元揃昆布になる道南が誇る一番高価な昆布です。見た目にも素晴らしい昆布です。尾札部天然昆布は道南の中でも一番甘みのある昆布だと思います。左の画像2枚はシワを伸して折りたたんだ後さらに圧力をかけて形を整えている様子です。
臼尻(うすじり)にて
左は漁師さんが船を出すスロープから海を見た画像で沖のほうまでロープが張られていました。天気は良かったのですが海は濁っていました。右は臼尻から南の尾札部方面を見た画像です。
たずねた漁師さんは奥様と2人で昆布の選別作業をされていましたが、神戸の昆布佃煮製造業者ですと話すと倉庫に案内していただき長い間昆布の話をうかがいました。倉庫には促成、養殖、天然と3種類の昆布が山のように詰まれ壮観な眺めでした。特に奥様は昆布製品に詳しく佃煮のこともよくご存知で色々と製品作りのヒントを頂きました。左の画像は天然昆布と促成昆布で見た目には判りにくいですが、奥の黒っぽい昆布が促成で手前の青みががかった昆布が天然です。これらの昆布をすべて伸ばして折って結束するのかと思うと気が遠くなります。帰りにたくさんの昆布をいただいたので、神戸に帰ってから礼状と一緒に佃煮を送りましたが気に入ってもらえたでしょうか?
大船(おおふね)にて
大船港内に繁茂している天然真昆布の写真。港内の水は澄んでいて昆布が手に取るように見えました。ひょっとしてと思い堤防に上がって港外の昆布を見に行きましたが海が濁っていて全然見えませんでした。事務所で生産状況を聞くと7月26日の解禁からお盆までは順調ですとうれしい答えが返ってきました。小安から大船までぐるっと回りましたが、道南地区は予想通り昆布はあると確信しました。
観光編
8月29日夕方洞爺湖へ向かって高速道路に乗りました。北海道は車も信号も少なく50Km位の距離でもそれほど遠く感じません。下道でも阪神高速を走っているような感覚です。右は夜洞爺湖での花火を撮った画像です。夏は毎週土日に花火大会があるみたいです。
翌日は低い雲が垂れ込めたうっとうしい天気でしたが洞爺湖畔の昭和新山と有珠山を訪れました。ロープウエーで有珠山へ上り、山上から撮った昭和新山が左、右が有珠山です。
有珠山展望台からは火口周囲の外輪山散策路があり、火口近くまで歩きました。左はその火口の様子で周囲には火山灰による堆積層の縞模様が良く見えました。右は展望台から見た洞爺湖で左端に羊蹄山が見えます。
上の画像は有珠山の外輪山散策の途中で噴火湾越しに撮った恵山岬から駒ケ岳にかけての海岸線のようすです。黒口浜の椴法華から続く白口浜全体が手に取るように見渡せました。これは外輪山散策をしたからこそ見れた景色で有珠山山頂から外輪山に至る45度162段の丸太階段の往復のつらさも吹き飛びました。ただ、神戸に帰ってからは、ふくらはぎの筋肉痛で数日間階段の上り下りには苦労しました。
千歳空港に向かう途中支笏湖に立ち寄りました。洞爺湖とは違い支笏湖の透明度の高さにはびっくりしました。左の画像は支笏湖から流れ出す千歳川ですが水草など川底がはっきり見えています。右は帽子をかぶったような山容の樽前山で活火山らしく噴煙が2本上がっていました。湖畔も整備されており天気の良い日にゆっくり訪れてみたいスポットです。
支笏湖畔の林道でのワンショット。あまりの森林の素晴らしさに車のCM撮影に来ているような気がしました。
今年も函館の天候が悪く念願の昆布漁体験が出来なかったのは残念でしたが、たくさんの漁師さんと情報交換できたことは大きな収穫でした。探訪記が今までで一番長くなったのもそういう理由からです。現地での情報通り入札でも道南産天然真昆布の上場数量は多く、価格も昨年より安く推移しています。私も黒口浜天然真昆布は昨年以上に仕入れました。これから、本場折浜折昆布・白口浜元揃昆布の値決めに移っていきますが、この調子で行ってもらいたいと願っています。