2010年度版
今年は関西国際空港から函館への直行便が一日1便に減便されたため席が取れず、行きは千歳へ行く破目になりました。航空会社の経営も相当厳しいようです。千歳から道南までは距離もあるので途中支笏湖で1泊してから道南白口浜へ入る予定を組みました。今年の夏は異常に暑く、事前の情報では函館でも何度も30度越えがあったそうです。昆布は高い水温を嫌いますので収獲時の高水温は品質に影響するのではと、心配しながらの訪問でした。
                                                



支笏湖(しこつこ) 
昨年帰りに寄った支笏湖の美しさが忘れられず、函館直行便が取れなかったのを幸いに1泊することにしました。支笏湖は洞爺湖と同じカルデラ湖ですが、透明度が高く最大水深360mは田沢湖に次いで日本で2番目だそうです。また、洞爺湖と違ってお店や宿泊施設も少なく完全なリゾート地になっています。歩いている人を見ていると家族連れやカップルが多く、まず慰安旅行などでは行かないと思います。
左は宿に入る前に樽前山の展望台から見た支笏湖の様子です。薄雲がかかり見づらいですが、目の前に原始林が広がり外輪山をバックに水をたたえる様は美しいの一言です。
左の画像は樽前山の裾野越しに見た支笏湖。右は展望台から見た樽前山の全容ですが、噴煙を上げる帽子のような溶岩ドームはここからは見えませんでした。画像では分かりませんが山の稜線に登山者の動く様子が豆粒が並んでいるように見えました。樽前山は標高も1041mと低くなだらかなので登山は比較的楽だと思います。ただ、白い軽石のような溶岩がごろごろしており滑りやすそうです。
湖に観光船があり乗船してみると内部が潜水艦のようになっており、すぐ目の前を魚が群れをなして泳いでいました。青く透き通った水の中で銀色に光り輝く姿に私は釘付けになりました。
右の画像は湖底にある溶岩が6角形の石柱のようになった観光船1番のスポットです。水深は5mぐらいでしょうか、どこまでも続く幻想的な姿に自然の偉大な力を感じずにはいられません。
噴火湾を経由して白口浜へ
翌日支笏湖を後にして高速道路に乗り噴火湾を回るように白口浜を目指しました。途中青空の下、昨年訪れた有珠山と昭和新山が現れデジカメに納めました。右側のとがった山が昭和新山で左の大きな山容が有珠山です。ここから白口浜まで直線距離では近いのですが、噴火湾に沿って大きく回る陸上ルートでは倍以上の距離があります。今回の訪問中の天気予報は雨でしたが、昨日から好天に恵まれ気温も関西とほとんど変わらず北海道にいるという感じはしませんでした。ラジオで札幌の最高気温が36℃と聞いてびっくりです。
白口浜尾札部に入るとすぐ目の前にたくさんの船が出ていました。手前に見えるゴム板のようなものが並んだ所は船を滑らせて海に出し入れするスロープです。私が撮影したところから船までは10mぐらいでしょうか。
尾札部での昆布漁の様子を間近に見るのは初めてなので目を凝らしてじっくりと眺めていたのですが、時間が経つにつれ何か違和感を感じました。
違和感というのは漁師さんの動きがあまり無いのです。竿をねじる様子も無く何か探しているのでしょうか。しばらくして竿の先に小さな網が付いているのが見えました。
この日の漁は昆布漁ではなくウニ漁の解禁日だったのです。後で聞くと尾札部の天然昆布漁はすでに終漁になったそうです。
漁協へ行くと取れたてのウニが大きな木の箱に山盛りになっていました。左手前の黒いウニがムラサキウニで上の白っぽいウニが馬糞ウニです。馬糞ウニはまさに馬糞のようで私は初めて見ました。
右は結束を待つ尾札部天然元揃昆布です。切り口が白いのは白口浜の特長です。
ある漁師さん宅での天日と機械の乾燥風景。これが天然昆布であれば嬉しかったのですが、画像でもわかるように肉が薄い促成昆布です。
今年の尾札部支所での水揚げは昨年より少ないようです。
特に天然は昨年の半分の見込みですが、水昆布(1年目の天然昆布)の繁茂状況がすこぶる良く来年は豊作が期待できそうです。
黒口浜(くろくちはま) 椴法華(とどほっけ日浦(ひうら)瀬田来(せたらい)
椴法華(とどほっけ)にて
椴法華のここの漁師さんを訪れるのは3回目になりますが、いつもお元気で気さくにお話をしてくださいます。ただ今年は昆布漁の前まで入院していたそうで、昆布漁のために無理に退院してきたと笑いながら話していました。
左は結束した昆布を包むダンボールで昆布の種類、産地、重量、生産者の表示がされています。右は昆布結束機を前に熱心に説明をしているところ。話の中で関西の昆布屋が昆布巻き取り機を購入して伸ばしているらしいと聞き「それは私です」と言うとにっこりされていました。
夕方椴法華港の防波堤から北を見た風景。透き通るような青空と、夕日がつくるコントラストはただでさえ美しい風景をなお一層引き立てているように感じました。中央の長い半島の様子は昔訪れたハワイのオアフ島の景色を思い出すほど印象的でした。
日浦(ひうら)にて
左の画像2枚は黒口浜日浦岬にある旧海岸道路で海に突き出した崖をくり貫いただけの4連続トンネルです。今は少し内陸側に広い幹線道路がありますが、昔はこの道路が生活道路として機能していたことを考えると、さぞ大変だっただろうと思わずにいられません。
ここの景色は対岸の津軽も見えて私がお薦めするスポットのひとつです。
日浦海岸の際にどくろを巻いたようにただよう生昆布のようす。今年も昆布漁に出れなかったので、誰もいないのを確かめて靴下を脱ぎズボンを捲り上げて海に入り、拾い昆布漁を体験することにしました。すぐ近くといえども海の中は滑りやすく、コンクリートの壁伝いにゆっくりと近づき何とかゲットしました。生昆布は思ったより長くて重く、どうやって持って帰ろうかと考えたあげくグルグル巻きにしてポリ袋に突っ込みました。神戸に持って帰ってから六甲店の前で吊るして天日乾燥しました。その昆布は今もお店に飾っています。
瀬田来(せたらい)にて
車で海岸線を走っていると昆布を干している家があったので車を止めて家の中をのぞくと、年配の方がテレビを見ていました。「昆布の話が聞きたいのですが」と声をかけると外に出てこられて色々と説明をしてくれました。左は倉庫で水昆布の説明をしているところ。右は製品の規格を説明してもらっている様子。
私も初めて見る昆布の規格表です。弊社が使う黒口天然真昆布加工用規格表の拡大写真ですが、他にがごめ昆布、水昆布、荷造り表が壁に貼ってありました。等級別の細かい基準(1枚あたりの重量、長さ、色、見栄え等)が書かれてあり、結束の仕方も図で示されています。漁師さんはこの規格表に沿って収獲した昆布を選別していきます。最後に等級別(1等緑、2等赤、3等紫、4等茶)に色ひもをかけて検査を受けてから出荷します。
社内で昆布を触っていると同じ等級でも漁師さんによって差があるのはある程度仕方が無いと思っていましたが、実際にお話を聞いていると漁師さんの目利きやその年の作柄で大きく左右されることが良くわかりました。
上の画像は私の姿が幽霊のように写っていますが、帰りの飛行機から函館の夜景を取った写真です。今回の北海道訪問は天気にはある程度恵まれましたが、海の状態が悪く念願の昆布漁は今回もお預けとなりました。ただ、回を重ねるごとに沢山の漁師さんとお知り合いになることができて『昆布』というものの奥の深さを一層感じるようになりました。最近、司馬遼太郎の「菜の花の沖」を読み私の父と同じ淡路島出身の高田屋嘉兵衛が箱館(当時の表記)を整備し昆布の普及にもかかわっていたことを知り何か縁みたいなものを感じています。最近はデフレで安くて便利な調理済みの食品が幅を利かし、伝統食材である『昆布』が忘れかけられている現状を考えると、何とかしなくてはといつも悩んでいます。微力ですが私が出来ることを考え、実践し一人でも多くの方に『昆布』の良さを解かっていただくよう頑張っていきたいと思います。